シャノアールで朝食を/茶の文化に感じる物寂しさ

シャノアールというところは、なんとも不思議な空間である。

チェーン店なのに、まるでチェーン店っぽさがない。昭和然としていて、いかにも古めかしい。フードメニューは、お世辞にも豊富とは言えない。それでも、日曜日の昼過ぎのシャノアールは、一見空性が見当たらないほどに活気を帯びていた。

株式会社シャノアールが運営するコーヒー・ハウスシャノアールは、1965年に東京都福生市に誕生した。シャノアールという店名は、かつてパリの芸術家たちが集っていたモンマルトルの丘のふもとにあるカフェが由来らしい。なるほど隣の席では、芸術大学の学生たちがあーでもないこーでもないと馬鹿話に花を咲かせている。

同じ株式会社ルノアールが経営するカフェ・ベローチェは、迅速を意味する店名のとおり、ファストフード色が強い。名前がよく似ているが、銀座ルノアールとは関係がない。スタバ、ドトール、タリーズ、、、コーヒーチェーンは数多くあれど、そのどれとも被らない。時間はゆったりと流れ、そこには、都会のカフェのような気負いはなく、いつも昔にタイムスリップしたような、そんな気分にさせてくれる。

ルノアールほどの高級感もなければ、ドトールのようなお手軽感もない。それを中途半端と揶揄する人もいる。だけど、物事にはいい塩梅というものがある。高級至上主義、効率至上主義。そんな風に何でもかんでも1番を目指さなくてもいいじゃないか。

シャノアールのナポリタン

(シャノアールのナポリタン。値段も味もちょうどいい。)

昭和然とした時間の流れる空間で、ちょうどいい塩梅のナポリタンをすすりながら読みふけっていた、これまた昭和然とした一冊、島崎藤村の『破戒』にこんな話が出てきた。

信州人ほど茶を嗜む手合も鮮少(すくな)かろう。こういう飲物を好むのは寒い山国に住む人々はの生来の特色で、日に四、五回ずつ集って飲むことを楽しみにする家族が多いのである。

喫茶店というと、文字通り元はコーヒーでなく茶を飲む店だった。日本人は茶が好きだ。とりわけ北国の人は茶が好きである。

漫画喫茶、カラオケ喫茶、メイド喫茶、執事喫茶、ゴーゴー喫茶、ノーパン喫茶・・・日本人は茶と共に歩み、茶によって文化を築いてきた。

フランスでは、テラスにテーブルやイスを並べて路行く人々のファッションを楽しみながら茶を飲む。中国では飲茶と共に、インドでは水タバコと茶を愉しむ。異邦に目を向けても、やはり文化の中心には茶があり、それぞれが独自の喫茶文化を築いてきたわけだ。

しかし近頃は、東京にいながらにして世界各国の茶文化を愉しめるようになった。それは大変魅力的であり喜ばしいことではあるのだけれど、世界がどんどん均質化していき、多様性を失っていくようで、どこか物寂しい心持ちがするのである。

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