リリー・フランキーさんが、とあるテレビ番組のなかでプロについて大変おもしろい話をしていた。
なんかプロフェッショナルになることが
すごい素晴らしいことだっていうふうになってるけど
俺はそうは思わないんですよ
すげーヤツはいっぱいいるし
それはプロとかアマチュアとか関係なくて
凄いヤツはいっぱいいますよ
そういうヤツに怯えて生きていくっていうことは
すごいしあわせだと思う
もっと凄くなりたいとか
もっといいモノを描きたいとか思えなかったら
だってなんかつくるハリがないっていうか
俺はそんなプロになりたくない
アマチュアでもいいから
プロがびっくりするような
ブラックジャックみたいに免許を持ってなくても
プロが直せないものを直せるようになりたい
リリーさんといえば、『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン』(新潮文庫、2010) を書いたベストセラー作家。
おでんくんなどのキャラクターを描く人気イラストレーター。
『そして父になる』『凶悪』をはじめ数多くの映画やドラマで活躍する実力派俳優。
ミュージシャン、シンガーソングライター、演出家、絵本作家、ラジオパーソナリティーなど、本当に多彩な顔を持つ。
そして、天才的な活動とサブカル的な力の抜けた人柄とのギャップが、リリー・フランキーという人をいっそう魅力的にしている。
リリーさんのマルチ活動の深層には、
「ひとつのことだけを極めたプロフェッショナルではなく、チョー凄いアマチュアでありたい」
という強い思いがある。
かの自伝的小説のなかでも、リリーさんはこんなふうに書いている。
僕は四十歳になろうかという今でも、箸の持ち方がおかしい。
おまけに、鉛筆の持ち方もかなりおかしい。
オカンがちゃんと教えなかったからである。
「食べやすい食べ方で、よか。」
とても、ザックリしていたのである。
ちなみに、ボクの鉛筆の持ち方を「変だ」と指摘した奴の中で、
ボクより字が上手だった奴は一人も居ない。
『東京タワー―オカンとボクと、時々、オトン』(新潮文庫、2010)
ちなみに、この小説はパソコンではなくリリーさん自身の手書きで書かれたのだが、その原稿には、一文字一文字驚くほど美しく端正な文字が綴られていたという。
僕は最近、プロブロガーという自分の肩書から”プロ”という言葉を消した。
リリーさんの「チョー凄いアマチュア論」が激しく刺さったからだ。
もともとプロを名乗りだしたのもリリーさんの影響なのだが、それは単に、僕がリリーさんの言葉の表面だけを見て、本当は黒いモノを白だと決めつけていたから。
プロがびっくりするようなアマチュア。
かっこよすぎるじゃないか。
そう考えると、会社員をしながらブロガーとして活躍するのももしかしたら、ブラックジャック的なものすごくかっこいい生き方なのかもしれない。