原田マハ『キネマの神様』を読んだのでご紹介。
ニュー・シネマ・パラダイスをはじめ不朽の名作映画が息つく暇もなく次々と飛び交い、興奮冷めやらぬ間にすっかり読み終えてしまった。
映画好きなら満足すること間違いなし。
『キネマの神様』のあらすじ
『キネマの神様』は、名画座を舞台に繰り広げられるヒューマンドラマだ。
作品紹介にはこんな風に書かれている。
無職の娘とダメな父。ふたりに奇跡が舞い降りた! 39歳独身の歩(あゆみ)は突然会社を辞めるが、折しも趣味は映画とギャンブルという父が倒れ、多額の借金が発覚した。ある日、父が雑誌「映友」に歩の文章を投稿したのをきっかけに、歩は編集部に採用され、ひょんなことから父の映画ブログをスタートさせることに。“映画の神様”が壊れかけた家族を救う、切なくも心温まる奇跡の物語。第8回酒飲み書店員大賞受賞作!
主人公は39歳独身の女性 歩(あゆみ)。
大型複合施設「アーバンピーク東京」を作った大企業でシネマ・コンプレックスを担当する部門の課長職についていたが、突如会社を辞めてしまう。
奇しくも辞表を提出した日に、マンションの管理人をする父が入院したと連絡が入る。
歩の父はギャンブル中毒でいつも母を泣かせてきた。
そんな父にギャンブルで作った300万円もの借金が発覚。
歩と母は今度こそギャンブルを止めさせようと、退院後は父のもうひとつの趣味である映画に没頭させようとする。
父の投書がキッカケで歩は映画雑誌「映友」の編集部でライターをすることになり、ひょんなことから父は映画ブログをはじめることに。
父の映画ブログによって家族は絆を取り戻し、名画座「テアトル銀幕」に奇跡を起きる。
『キネマの神様』の解説
東京の名画座案内
作品の舞台になっている名画座「テアトル銀幕」は東京・市ヶ谷にある。
市ヶ谷は新宿と千代田区にまたがり、靖国神社や皇居が近く、法政大学や上智大学のキャンパスもある由緒ある土地だ。
江戸城外堀跡を利用して作られた外堀公園は桜の名所としても有名。
ボクも何度か歩いたことがあるが、高層ビルと自然が同居する都会のオアシスといった感じで穏やかな気持ちになれる。
残念ながらテアトル銀幕は架空の名画座なので現実世界には存在しないが、お隣の飯田橋には「ギンレイホール」という名画座がある。
1974年開館、ロードショーが終わった映画を2本立てで上映する映画館だ。
名画座といえば2本立てが普通で、安く映画を観られるので昔は年中入り浸っている大学生や予備校生も多かったという。
いわゆるシネマ・コンプレックスと呼ばれる大型の映画館が主流になり娯楽の種類も増えた現代ではすっかり影を潜めてしまったが、中高年を中心に今でも根強いファンを持つ。
東京近郊に現存する名画座(+単館系、ミニシアター)は、
- 早稲田松竹
- 神保町シアター
- 飯田橋ギンレイホール
- 目黒シネマ(大蔵映画)
- 新文芸坐
- キネカ大森
- シネマヴェーラ渋谷
- 下高井戸シネマ
- ラピュタ阿佐ヶ谷
- 国立映画アーカイブ
- ブルースタジオ
- ポレポレ東中野
- シネスイッチ銀座
- ユーロスペース
- 新宿武蔵野館
などなど。
◇参考
【まとめ】今なお支持され続ける東京の名画座11選
わざわざ行きたい特別な空間。都内のディープなミニシアター10選 | キナリノ
作中で引用された映画作品
『キネマの神様』の作中には、名前から登場するだけのものから深く言及されているものまで、古いものを中心に実際の映画作品が実に数多く引用されている。
名作映画のアーカイブとしての楽しみ方もあるし、作品を観てから本書を読み返すとまた違った味わいがあるかもしれない。
- ニュー・シネマ・パラダイス
- フィールド・オブ・ドリームス
- 硫黄島からの手紙
- 眺めのいい部屋
- アメリカン・ビューティー
- シンドラーのリスト
- I am Sam アイ・アム・サム
- フォレスト・ガンプ 一期一会
- 小説家を見つけたら
- プライベート・ライアン
- タイタニック
- アメリ
- 戦場のピアニスト
- イングリッシュ・ペイシェント
- Shall We ダンス?
- 七人の侍
- インディ・ジョーンズ 最後の聖戦
- ターミナル
- ビッグ・フィッシュ
- ゴースト ニューヨークの幻
- 天国から来たチャンピオン
- チャップリンの殺人狂時代
- ワーキング・ガール
- カッコーの巣の上で
- セックス・アンド・ザ・シティ
- テルマ&ルイーズ
- 自転車泥棒
- 或る夜の出来事
- カサブランカ
- シャイニング
- グッドナイト&グッドラック
- ブロークバック・マウンテン
- ローマの休日
- あなたがいたら 少女リンダ
- モーリス
- 予告された殺人の記録
- 花嫁のパパ
- アバウト・シュミット
- サスペリア
- Marianne de ma jeunesse
- 時をかける少女
- 真昼の決闘
- キング・コング
- ゴジラ
- 大怪獣ガメラ
- ミクロの決死圏
- 第三の男
- ALWAYS 三丁目の夕日
- シェーン
- 荒野の七人
- オール・アバウト・マイ・マザー
- トーク・トゥ・ハー
- 捜索者
- 黄泉がえり
- リトル・ミス・サンシャイン
- アダムス・ファミリー
- ロビンフッドの冒険
◇参考
原田マハ著『キネマの神様』に登場する映画のまとめ – NAVER まとめ
『キネマの神様』の作品情報
作品名 | キネマの神様 |
---|---|
著者 | 原田マハ |
出版社 | 文藝春秋 |
出版日 | 2011年5月10日 |
まとめ
著者の原田マハさんといえばニューヨーク近代美術館への勤務経験もあり、美術作品を題材にした小説を多数出版している。
「『楽園のカンヴァス』を読んで原田マハにハマった」
という人が結構多いようだが、ボクの場合はこの『キネマの神様』がはじめて読んだ原田マハ作品。
そこですっかりハマってしまい、まだひと月も経たないのに『旅屋おかえり』→『楽園のカンヴァス』→『美しき愚かものたちのタブロー』と狂ったように原田マハ作品を読みふけっている。
作中ではダメな父がブロガーになって奇跡を起こすわけだけど、やっぱりブログの価値ってお金だけじゃないよなあ。
お金はもちろん大切。だけどお金のためだけにブログを書くなんてあまりにもったいない。
ブログにはもっと素晴らしい奇跡を起こす力があるんだ。
そんな風に勇気も湧いてきた。