電通の新卒女性社員自殺と、巨大メディアの終焉

こんにちは。ニシムラ・ケイイチ(@prblggr)です。

先日、大手広告代理店の電通で、新卒の女性社員の高橋まつりさんがクリスマスに投身自殺をするという、大変痛ましい事件が起こりました。

高橋さんの死は、過労自殺として三田労基署から労災認定を受けました。

月の残業時間は最長で130時間にも達していたそうです。

業務が大幅に増えたのは、試用期間が終わり、本採用になった昨年10月以降。部署の人数が14人から6人に減ったうえ、担当する企業が増えた。月100時間を超える時間外労働をこなしたこともあり、高橋さんは精神障害による労災認定の基準の一つを超えたと判断された。

電通では、社内の飲み会の準備をする幹事業務も新入社員に担当させており、「接待やプレゼンテーションの企画・立案・実行を実践する重要な訓練の場」と位置づけている。飲み会の後には「反省会」が開かれ、深夜まで先輩社員から細かい指導を受けていた。上司から「君の残業時間は会社にとって無駄」「髪がボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「女子力がない」などと注意もされていたという。(引用:「死んでしまいたい」過労自殺した電通の新入社員 悲痛な叫び

月の残業時間が100時間というのは、週休2日として、毎日5時間以上の残業をしていた計算になります。

ふつうの人にはまったく想像がつかない世界ですが、自殺者が出るほどの激務である電通の社員は、一体どんな一日を過ごしているのでしょうか?

私はこの事件を聞いたとき、遠い昔に読んだ、あるブログ記事を思い出しました。

それは、

元電通社員で、人気予備校講師の今井宏先生のブログです。

今井先生はブログで電通時代のことも書かれているのですが、その中に、今回の事件を理解するヒントになる、大変興味深い記事がありました。

東進ハイスクールの人気予備校講師、今井宏って?

今井宏先生は、大学受験を経験した人なら誰もが知っている存在ですが、先生のことをはじめて知った方のために、簡単に今井先生の経歴をご紹介しますね。

今井宏先生は、1958年秋田県生まれの予備校講師です。早稲田大学政治経済学部を卒業後、電通に入社。

30歳になる目前に電通を退社して、予備校講師に転身。

とにかくわかりやすい授業と英語にとどまらない博識な雑談ですぐに人気になり、河合塾、駿台予備校、代ゼミという、日本の3大予備校でトップ講師を歴任した異色の経歴をお持ちです。

現在は東進ハイスクールに在籍し、授業をするかたわら年間100回以上の講演会を開催し、全国の高校生や大学受験生を魅了しています。

講師歴は20年、著書は15冊を超え、名実ともに日本を代表する予備校講師です。

今井宏先生の電通時代の生活

今井先生は新卒で電通に入社して、30歳になる目前に、緊張の糸がプツンと切れたように突然、会社を辞めてしまいました。

今井先生に一体何があったのでしょうか?

今井先生のブログには、電通退社に至った経緯がくわしく書かれている記事があります。

・・・お酒好きというより、飲み屋のハシゴが好き。毎晩朝3時過ぎまで銀座&六本木を飲み歩き、それに付き合わされて、こちらはとても身体がもたない。六本木から松戸(松戸の西口、Dマートの横の汚いマンションに住んでいた頃だ)までタクシーで帰ると、すでに朝4時、6月なら、もうすっかり夜が明けている。6000円のタクシー代がかかるが、「タクシー券」という魔法のジュータンがあって、タクシー代はすべて会社持ちである。
 ただしそれが「そんなこともあったな」と言って懐かしい思い出話になるならいいが、連日連夜それが続くのでは、心も身体もとてももたない。4時から6時半まで死んだように眠っても、酒は全く抜けていない。這うようにしてマンションを出て、松戸から千代田線で日比谷、日比谷から日比谷線で東銀座、40分強しかかからないその通勤が、二日酔いの頭痛に悩まされる毎日。出社すると、そこにはやはり酒の抜けていない先輩が待ち構えていて、おそらく酒のせいで機嫌が悪く、あれやこれやと説教が始まり、それが午前中ずっと続く。お説教というより、絡んでいるだけだったかもしれないが、11時頃ヤクルトおばさんが大きなバッグを肩にかけてやってきて、みんなでヤクルトを1本飲んだ所で、やっとご機嫌が直る。ご機嫌が直ると、「今井、カレー食うぞ」。以上、やっとのことで「ナイルレストラン」に話が戻る。(引用:Thu 090430 銀座散歩 ナイルレストラン「ムルギランチ」 それに関わるつらい記憶|今井宏オフィシャルブログ「風吹かば倒るの記」Powered by Ameba

仮に朝8時に出社して、17時まで8時間働くとします。

5時間の残業をして22時。そのあと上司のお酒に付き合わされ、うちに帰り着くのは朝の4時。

2時間半だけ眠って、6時半には起きて、お酒も抜けないまま這うように会社へ。

そんな地獄のような日々が、毎日繰り返される。

時代や部署もちがいますが、亡くなった高橋さんが「2時間しか眠れない」と言っていたのが、まったくウソではないことがわかります。

上司から「髪がボサボサ、目が充血したまま出勤するな」「女子力がない」などと注意もされていたそうですが、女子力うんぬん言っていられる生活ではないことは明らかです。

巨大メディアの終焉

いま私がこの記事を書いている2016年時点では、電通は間違いなく日本の代表するトップ企業です。

電通が強い理由は、メディア企業であるから。

新聞、ラジオ、テレビ、インターネット

そして、それらメディアに巣食う広告。

人と人、人とモノをつなぐ媒体(media)である巨大メディア企業は、いつの時代にも大きな成功を収めてきました。

しかし、時代は徐々に、これまでとは異なる方向にシフトしつつあります。

国民全員が巨大メディアを視聴する「1対1億」の時代から、国民1人1人が自分で視聴するメディアを選択する「1対1」の時代へのシフトです。

ブログ、YouTube、Facebook、Twitter、Instagramなど、個人メディアの台頭により、旧来型のメディア・広告の価値は、これからますます低下していきます。

もちろんテレビや雑誌、新聞にもそれ固有も価値があります。

たとえば私はテレビドラマが大好きです。

ドラマがなくなることは考えられません。

しかしドラマを発信するプラットフォームが、テレビである必然性がなくなるということです。

テレビよりも発信力(広告力)のある媒体が生まれれば、ドラマも自ずとそちらで放送するようになります。

もしかしたら近い将来、ドラマはテレビではなく、YouTubeで放送されているかもしれません。

YouTubeよりもよりもテレビが選ばれるのは、単純にまだテレビのほうが発信力があるからです。

テレビ番組よりも発信力のある個人のYouTubeチャンネルがあれば、聡明な企業はそちらを選びますし、個人が直接企業と提携して代理店としての役割も担うことにより、巨大メディアとそれを支える広告代理店は共に仕事を失うことになるのです。

テクノロジーの発達により、近い将来、仕事をコンピュータに奪われ失業する人が増えるという見立てがありますが、巨大メディアもまた、失業の危機にあるわけです。

そんな中、今回の事件。

ただでさえ存続の危機にある企業が、今井先生が在籍していた20年前と相も変わらず、劣悪な労働環境で社員をはたらかせている。

10年存続する会社が1割未満と言われる時代に、これほど時代に逆行する旧態依然の組織が生き残る理由がどこにあるでしょうか?

もちろん、中の人には中の人の言い分があるし、部外者が軽々しく口にできる問題ではないのかもしれません。

巨大メディアは、その巨艦ゆえ、舵を切るのも容易ではありません。

しかし電通内部でも、多くの人がすでにこのことに気づいているはずなんです。

だからこそ、電通や博報堂をはじめ、一流企業出身のブロガーやアフィリエイター、情報発信者が次々とあらわれている。

巨大メディア企業がこれからの時代を生き残れるかどうかは、新卒一括採用を廃止し、週休3日制の導入を検討するヤフーのように、時代のトレンドにマッチする企業へとどれだけ早く舵を切れるか否かにかかっています。

視聴者にもメディアを見極める眼が問われる

メディアが在り方を問われるのと同時に、私たち視聴者側にも、自分でメディアを選択していく眼が問われます。

これまでは、テレビやラジオ、新聞といった画一されたメディアで、国民全員が画一された価値を付与されてきました。

しかし、これからは個々人がメディアを選択し、そこからメディア固有の価値観を付与されます。

間違ったメディアを信奉すれば、オウム真理教の地下鉄サリン事件のように、知らず知らずのうちにあなた自身が事件の加害者にだってなりうるのです。

情報過多の時代には、地に足をつけて、不要な情報を受容しないことが、生きるために不可欠なスキルになります。

あなたもメディアとの関わり方について、いま一度じっくりと考えてみられてはいかがでしょうか?

人の生死と芸能人のスキャルダルは、私がブログで特に触れたくない事柄ですが、今回はどうしても言いたいことがあったので、書かせて頂きました。

最後になりますが、被害者である高橋まつりさんのご冥福を心よりお祈りいたします。

————————–
ニシムラ・ケイイチの詳しいプロフィールとお問い合わせはこちらからお願い致します。
お問い合わせ

ブログ更新はTwitterにてお知らせしております。ぜひフォローしてください!
@nissy421